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スイスでワイン造ってるの?

かなりのワイン好きの方でも「スイスでワイン造っているの?」と驚かれることがよくあります。

他のヨーロッパの国々と同様、スイスでもワインは造られているのです。
生産量の98%以上が自国消費のため僅か1.5%しかスイス国外に出回らず、日本には0.1%しか入ってきていないといわれています。
そのためスイスワインを飲まれたことがないソムリエの方も多いです。

人口約857万人の九州と同じくらいの小さな国土ですが、26全州でワイン造りが行われ、年間生産量は1億リットル、1,500以上のワイナリーがあります。
日本における日本酒の酒蔵は1,400以上あると言われておりますが、ワイナリー(酒蔵)の人口比率は日本の10倍もあるのです(スイスは8人に1つのワイナリー、日本は85人に1つの酒蔵)。

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スイスワインの歴史​

紀元前3000年には既にぶどうが存在しており、その当時からワインが生産されていたと推測されます。一般的には古代ローマ人がワイン生産をもたらしたと言われており、2,000年以上ワインを造っている歴史があります。

中世にはブルゴーニュからシトー会の修道士がやって来て急斜面を切り開き、棚畑を作り、何キロにもおよぶ壁を作るなどワイン造りの伝統を築き上げました。(棚畑や壁は今でも残っています)

長いワイン造りの歴史はあるものの、かつてのワイン産業はスイス連邦政府から保護されていたため、ワイン生産者の多くは品質向上に対するモチベーションは持ち合わせていませんでした。
 

ところが1980年代になり、外国産のワインの輸入が自由化され競争原理が持ち込まれたことによって生産者たちの意識が変わりました。

それら生産者の子息たちはブルゴーニュ、ボルドー、カリフォルニアといった銘醸地でぶどう造りや醸造を学び、スイスワインの品質向上に大きく寄与し、今ではワイン通を唸らせる美味しさのワインを造っています。

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スイスのぶどう畑と産地​

スイス全土でワインは造られており、九州とほぼ同じ広さの国土(41,285㎢)のうち約15,000ha(150㎢)をぶどう畑が占めています(国土の約0.4%)。

15,000haという数字はフランスのワイン産地の一つであるアルザスとほぼ同じ、ブルゴーニュの約半分です。

主な産地と生産量の割合は、ローヌ川畔のヴァレー(ヴァリス)州35%、レマン湖畔のヴォー州26%、ジュネーブ州9%、ティチーノ州6%、ドイツ語圏のグラウビュンデン 州やバーゼル地方などが残り20%を占めます。

ヴォー州のラヴォー地区にあるぶどう畑はユネスコの世界遺産にも指定されているほどの美しい景観を誇ります。
また、ヴァレー州のヴィスペルターミーネンにはヨーロッパで最も標高の高い場所にある(標高1,150m)ぶどう畑があります。

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​スイスのぶどう品種

​​スイスでは250種類以上の品種が栽培されており、シャルドネやピノ・ノワールといった国際品種の他に、約80種のスイスの固有品種で、他の国ではほとんど栽培されていないぶどう品種が多くあります。

また、バイオテクノロジーの先進国であるスイスでは様々な品種改良が行われています。

主な品種は白ではシャスラ(全生産量の27%)で、赤はピノ・ノワール(全生産量の29%)です。
固有品種としてはプティット・アルヴィン(白)、ユマーニュ・ブラン(白)、ユマーニュ・ルージュ(赤)、コルナラン(赤)、ガマレ(赤)、ガラノワール(赤)など、多くの方が初めて聞かれるようなぶどう品種が栽培されています。

珍しい品種をいろいろ試すのもスイスワインの楽しみのひとつですね。​

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​スイスのワインって高いの?

よく言われるのが「スイスワインは高い」です。
その一番の理由は世界一物価が高いことです。ハンバーガーのビッグマックが1個約750円と日本の約2倍もします。

また、山の多い国土でぶどう畑を開墾、維持するためのコスト、全て手摘みで丁寧に収穫される等も、ワイン生産のコストを高めている理由です。
しかし、ワインの「値段」ではなく「価値」を考慮するとどうでしょうか。

ワイン生産者で元スイスワイン推進協会長のGilles Bessseはこう言っています。
「安いスイスワインは高い、高いスイスワインは安い」
高品質のスイスワインを他国の同等のワインと比較すれば、スイスワインはリーズナブルな値段であるといえるでしょう。

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​魅力の宝庫スイスワイン

ずばりその「美味しさ」がスイスワインの魅力です。

しかし、美味しいワインはワイン産出国ならどこにでもあります。

スイスワインの最大の魅力はオンリーワンの味わいです。

フランスやイタリアといったワイン大国ではほとんど栽培されていないぶどう品種を使い、それらワイン大国に遜色のないエレガントさや、深い味わいのワインが多く造られています。
通常赤ワインを造るメルロ種を使って白ワインを造っているのもオンリーワンの味わいの代表的な例といえます。

また、多様性もスイスワインの魅力の一つです。

小さな国であるにもかかわらず4つの公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)が話されている文化的にも多様な国です。

アルプス、川や湖によってもたらされる自然条件も様々であり、ワインも多様な品種から造られ、味わいもバラエティに富んでいます。

希少価値もスイスワインの魅力といえます。

冒頭お伝えした通り、そのほとんどが国外に出回らないため、多くの方がその存在をご存知なかったり、味わったことがないという希少性もワインマニアの心をくすぐるのではないでしょうか。

「食通が最後に辿り着くワイン」といわれるスイスワインをぜひお楽しみください。

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スイスへの訪問は30回を超え、26全州を訪れた自称「日本 No.1のスイス愛好家ヘルベティカ森本」が自ら体験した現地での様子や情報をブログで綴っています。

ワインのことにとどまらず、ガイドブックに載っていないようなスイスの生活・文化もお伝えしています。

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